弊社では、このタイミングで行う試験を便宜上『中間気密試験』と呼んでいます。

2025.01.14

そもそも気密性能試験とは、建物のあちこちに存在する『あってはならない隙間』の合計面積を測定する試験です。

あってはならない隙間を、居住者が塞ぐ事の出来ない穴と言い換えても良いかもしれません。

窓や吸排気口、換気扇等は開けたり閉めたり出来るでしょ?

でも床と壁の取合いや壁と天井の取合い、開口部と壁の取合いなどにある隙間は塞ぐ事が出来ないんです。

こうした隙間があると、室内環境が悪くなります。

暑かったり寒かったり、光熱費が嵩んだり、建物の寿命を短くする原因にもなります。

中には「現在住んでいる家は気密性が低いけど、特に問題はないよ。」なんて思う方がいるかも知れませんね。

でも今お住みの建物では、24時間換気なんて行ってないと思います。

もし行っていたとしても、有効に機能しているとは思えません。

そもそも24時間換気とは、常時建物内の空気を外気と入れ替える換気を指します。

トイレやお風呂、キッチンに設置された換気扇を24時間回していれば良い訳ではありません。

また昔のように窓を開けていればOKという訳でもないんです。

ちなみに建築基準法では、2時間で家中の空気を全て外気と入れ替える事を義務付けています。

例えば延べ床面積100㎡の家があったとします。

平均天井高さが2.4mだとすれば、建物気積(室内空気の体積)は2.4m×100㎡=240㎥になります。

これを2時間ごとに外気と入れ替える訳ですから、1時間当たり120㎥の室内空気を捨て、外気を120㎥採り入れる必要がある訳です。

これを0.5回/h換気と言ったりします。

雨が降ろうが台風が来ようが、換気を続けなければなりません。

たとえ黄砂が舞っていても、火山灰が降っていてもです・・・。

窓開け換気なんて、到底無理でしょ?

一般的に3種換気と言われる換気方式を採用する事が多いんですが、これって機械による強制排気を行う事で建物内を負圧とし、自然給気口から不足した分の新鮮空気を入れる仕組みです。

つまり建物内の気圧が常に外より低い訳です。

だから隙間があれば、そこから大量の外気が侵入する事になります。

従来の住宅は、残念ながら0.5回/h換気を満たしていない事が多いんです。

だから、あまり問題を感じる事がありません。

でも、これを行うと、隙間風に起因する様々な問題に悩まされる事になるんです・・・。

だから気密性を高める必要があります。

そして気密性の高さを確認するためには、気密性能試験を行うしかないんです。

減圧法による気密性能試験のイメージ図を挙げてみました。

外から中に向かう矢印が隙間から侵入する空気を示しています。

図中の送風機・流量調整器・流量測定装置をまとめて気密測定器と言います。

これを一般的には窓に取付けます。

正確に言えば、解放した窓に気密シートを張り、そこに送風機を固定する訳です。

そして送風機から室内空気を排出します。

すると建物内の気圧は下がる筈でしょ。

隙間が全くない建物であれば、どんどん気圧が下がります。

でも隙間があれば、気圧は下がりません。

隙間から外気がどんどん入ってくるからです。

隙間面積の多寡が気圧の高低に影響する訳です。

実際の試験では、送風量を変えながら気圧の変動を記録します。

そして、このデーターを元に隙間の合計面積を算出します。

総隙間面積=100㎠という具合です。

皆さんはC値という言葉を聞いた事があるでしょうか?

隙間相当面積なんて言う場合もあります。

建物の総隙間面積を延べ床面積で割った値です。

例えば延べ床面積100㎡の建物の総隙間面積が100㎠であれば

C値=100㎠÷100㎡=1.0㎠/㎡となります。

古い家であれば、C値が5.0㎠/㎡以上なんて事がザラにあります。

最近の家のC値は2.0~5.0㎠/㎡くらいでしょうか?

気密性の良い家であれば、これが1.0㎠/㎡以下だったりします。

冒頭、完成時気密性能試験という表現をさせて戴きました。

一般的には、気密施工完了時に気密性能試験を行う事が多いんです。

このタイミングで行えば、万が一気密施工に不備があっても是正が可能です。

弊社では、このタイミングで行う試験を便宜上『中間気密試験』と呼んでいます。

でも完成時の試験で気密施工の不備が発見されても、是正は出来ません。

だから弊社でも、以前は中間気密試験が当たり前でした。

でも今は完成時に変えています。

その理由は割愛しますが、完成時に試験を行った方がより実際の生活状況に近い試験結果が得られるからです。

では早速、気密性能試験の様子を挙げてみましょう!

試験に先立って、やらなければならない事があります。

ちなみに、このお宅は第3種換気システムを採用しています。

①換気システム本体のスイッチを切る。

コントローラーの青ランプが消えればOKです。

②全ての自然給気口を閉じる。

 テーピングは行いません。

 あくまでも蓋を閉めるだけ。

 ついでに全ての開口部が閉まっている事を確認します。

③全ての排気口を閉じる。

 排気口には蓋がついていないので、テーピング処理を行います。

中間時であれば、外壁に設けられた自然給気口の穴をテープで塞いでしまいます。

また排気口に関しては、外壁に設けられた穴をテープで塞ぎます。

でも完成時には、こうした処理が出来ません。

④全ての什器の排水口に水を流し、封水を行う。

外壁に明けられた電話線やLANケーブルを通す為の穴については、特に何もしません。

これも中間時ではテーピングを行いますから、完成時の方が漏気量が多くなる訳です。

これにて事前準備完了!

気密測定技能士が来るのを待ちます。

気密測定器の据付が完了しました。

さっそく1回目の試験を開始しましたが、思うような数値が出ません。

それもその筈・・・。

割と大きな穴を塞ぎ忘れているんです。

写真左上にデロンギが見えるでしょ?

部屋を暖めようと、急遽持ち込みました。

実は1・2階部分のエアコンが、まだ取り付けられていません。

室内機は取り付けてありますが、配管工事だけが未完了。

スリーブの中を見ると、配管回りに大きな隙間が明いたままになっていました。

ドレンホース&冷媒管は通してあるけど、隙間埋めを行っていないんです。

まだ配管をいじる予定なので、隙間に発泡ウレタン等を充填する訳にはいきません。

この隙間がある分、総隙間面積が大きくなっている訳です。

その点を説明した上で、試験を進めました。

1回目の試験結果

総隙間面積:23㎠

隙間特性値:1.41

2回目の試験結果

総隙間面積:23㎠

隙間特性値:1.41

3回目の試験結果

総隙間面積:24㎠

隙間特性値:1.41

3回ともに、ほぼ同じ数値でした。

延べ床面積は63.45㎡ですから、C値は0.4㎠/㎡になります。

ちょっと不本意な値です。

でも仕方ありません。

エアコンの穴を塞いだら、再測定してみようかな・・・。