暑さ対策の要は、湿度なんです。
先日、OB宅にお邪魔した際にエアコンのドライ運転の話になりました。
冷房運転とドライ運転の違いって、まだまだ理解されていない方が多いんだなぁーと感じました。
除湿(ドライ)のしくみは、意外と簡単なんです。
空気の温度を下げる事で空気中の水分を結露させ、発生した水を捨てる。
これだけなんです。
その原理は、コップの外側についた水滴と同じです。
詰めたい氷水を入れたコップの外側には、水滴がついてるでしょ?
これはコップの周りの空気に含まれた水分が、冷たいガラスで冷やされる事で結露するのが原因です。
空気の中に含む事が出来る水分量(飽和水蒸気量)は、温度により変わります。
温度が上がれば含むことの出来る水分量は増え、下がれば減ってしまいます。
空気中に含むことのできなくなった水分は水になります。
これを結露と言いますが、この時の温度を露点温度と言います。
例えば28℃/60%の露点温度は19.5℃です。
氷水で冷やされたコップの外側が19.5℃を下回れば、結露が発生する訳です。
これを意図的に行っているのが、エアコンのドライ運転もしくは冷房運転です。
前者は温度を下げずに除湿する運転モードであり、後者は温度と湿度を下げる運転モードだと思っている方が多いかもしれません。
でも、実はどちらも同じ原理を利用しているだけなんです。
違いは温度の下がり具合だったりするんです・・・。
簡単に仕組みを説明しておきます。
①湿度の高い室内空気をエアコンの室内機に採り込みます。
②室外機から運ばれた冷媒で冷たくなった熱交換器が、採り入れた空気を冷やします。
③その際に結露した水が熱交換器表面に付着します。
④空気中から取り去った余分な水は、ドレンホースから建物外に排出。
⑤冷たくなった空気が送風口から出る訳です。
28℃/60%の空気が19.5℃で結露する事は先程書きました。
ちなみに、この時、送風口から出たばかりの空気は19.5℃/100%に近い空気となります。
えっ!湿度100%なの?
と驚く方も多いのでは?
一般的に湿度と言えば、相対湿度を指します。
相対湿度とは、ある温度の空気に含まれる水分量(水蒸気量)の飽和水蒸気量に対する割合で示した値です。
28℃/60%の空気1.0㎥には、16.33gの水蒸気が含まれています。
28℃/100%の空気1.0㎥に含む事の出来る水蒸気量は27.22gですから、その割合は60%になるでしょ?
話を戻しましょう。
28℃/60%の空気1.0㎥には、16.33gの水蒸気が含まれています。
そして19.5℃/100%の空気1.0㎥には、16.79gの水蒸気を含む事が可能です。
でも元の28℃/60%の空気には、16.33gしか水蒸気は存在しません。
16.33gの水蒸気を含む19.5℃の空気って、相対湿度は97.2%なんです。
でもこれでは空気中の水蒸気量は変わらないでしょ?
では熱交換器の温度を17℃にしてみましょう。
17℃/100%の空気1.0㎥の水蒸気量は14.47gです。
これなら、16.33g-14.47gで1.86g/㎥の水蒸気を除湿出来ます。
でも17℃の風が出続けていれば、室温も下がっちゃうでしょ?
再熱除湿方式であれば、ヒーターで温める事が出来ます。
でも省エネとは言い難いでしょ!
この辺りの設計が非常に難しいんです。
設計の腕の見せ所という訳です。
最近、環境省の『熱中症予防サイト』では暑さ指数を発表しています。
暑さ指数(WBGT(湿球黒球温度):Wet Bulb Globe Temperature)は、熱中症を予防することを目的として1954年にアメリカで提案された指標です。
単位は気温と同じ摂氏度(℃)で示されますが、その値は気温とは異なります。
暑さ指数(WBGT)は人体と外気との熱のやりとり(熱収支)に着目した指標で、人体の熱収支に与える影響の大きい
①湿度
②日射・輻射(ふくしゃ)など周辺の熱環境
③気温
の3つを取り入れた指標です。
このうち、①の湿度が占める割合が多いと言われています。
そう、暑さには湿度がすごく影響を与えているんです。
言い換えれば、湿度対策が暑さ対策の要となります。
上手に湿度を下げるためにも、除湿運転&冷房運転を上手に行いたいものです。