住宅の省エネ性能はUA値で判定できるとは限らない
以前参加した『新住協のオープンセミナー』で鎌田先生に教えて頂いた事を、抜粋してお伝えします。デグリーディ法による暖房時・冷房時の熱収支と暖冷房エネルギーの計算という話です。
図のQは、内外温度差1℃の時の各部位を移動する熱量を示しています。
Q部位=部位の熱貫流率×部位の面積
また換気は次式になります。
Q換気=0.35×住宅の気積×換気回数
移動する熱量(総熱損失係数)はそれぞれのQ部位+Q換気となる為、次式となります。
Q全部=Q天井+Q外壁+Q床+Q開口部+Q換気
これに内外温度差を掛けたものが暖房時は家から逃げていく熱、冷房時は外から家に入ってくる熱となります。
暖房時は逃げる熱と暖める熱が同じなら室温が保たれますから
Q全部=H暖房+E日射+E室内発生熱
となり、変形して
H暖房=Q全部‐(E日射+E室内発生熱)
となります。
これは温度差1℃当たり、1時間当たりの数値ですから、これに温度差と時間を掛けて暖房エネルギーを求めます。
このことから、暖房エネルギーを減らすには
①断熱材を厚くしてQ全部を小さくする。
②換気の熱回収を図る。
③日射熱を増やす。(日当たりの良い南面窓を大きくする)
また同時に、住宅内の蓄熱容量を増やすことも重要です。
日射については、窓を大きくすると熱損失が増えQ全部が大きくなります。
それを上回る日射熱を摂り込む事が必要で、南東~南西の日当たりの良い窓が必要となります。
これに対して冷房時は、室内に入ってくる熱とエアコンで冷やす熱が同じなら、室温が保たれますから
H冷房=Q全部+(E日射+E室内発生熱)
となります。
暖房時とは逆に
E日射+E室内発生熱
は冷房負荷を増やします。
これが高断熱化のレベルを上げても、大幅には冷房負荷が減らない理由です。
エアコンが室内の空気を冷やす時、空気中の水蒸気がエアコン内部で結露します。
この時に、水蒸気を水に変える潜熱負荷も必要となります。
換気で取り入れられる外気も、同様に潜熱負荷となります。
この事から冷房エネルギーを減らすには
①断熱材を厚くしてQ全部を小さくする。
②換気の冷熱回収を図る。
③日射熱を減らす。(東西の窓を減らす、日除けを行う)
暖房時を考えると遮蔽系のガラスを使うより、日除け等で対処する事をお勧めします。